ラリンジアルマスクエアウェイ:手術のための日常的な自発的換気を超えた使用の拡大

Shauna Schwartz, DO; Yong G. Peng, MD, PhD, FASE, FASA
サマリー: 

この記事では、ラリンジアルマスク(LMA)の進歩と、その日常的および非日常的な使用について説明します。気管チューブと比較したLMAによる誤嚥のリスクを分析します。また、新世代LMAで人工呼吸が安全かどうかも確認します。

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序論

ラリンジアルマスクエアウェイ(laryngeal mask airway, LMA)は、フェイスマスクと気管チューブ(endotracheal tube, ETT)の代替気道デバイスとして、1983年にArchie Brain(MD)によって発明された。1古典的なLMAの確立以来、デバイスは複数の改良と変更を経てきた(表1)。LMAは、マスク単独よりも質の高い換気が可能であり、気管チューブよりも装備が軽い。2 LMAの利点には、ETTよりも使いやすさと気道組織への損傷が少ないことが挙げられるが、LMAを強制的に使用すると外傷が生じる可能性がある。3-6 LMAを使用すると、ETTを使用した場合よりも血行動大変への影響や術後合併症が少なくなる。2 LMAは、全身麻酔を必要とする手術や、気道確保困難の救助装置として広く使用されている。7 アメリカ麻酔科学会によって開発された最新の困難気道アルゴリズムでは、LMAは緊急の非侵襲的気道アクセスのための優先される器具である。7 多くの臨床調査と研究により、LMAは安全で信頼性の高い気道デバイスであることが実証されている。2,6,8,9 しかし、陽圧換気(positive pressure ventilation, PPV)や筋弛緩薬、腹腔鏡手術、肥満患者など、臨床現場でのLMAの標準化されていない使用基準については議論が続いている(表2)。LMAの使用に関する懸念は次のように分類できる。(1)位置異常によるLMAの不適切なシール。 (2)喉の不快感から永久的な組織損傷に至るまでの様々な気道損傷。 (3)誤嚥のリスク。(4)自発換気とは対照的な機械的換気の安全性。 (5)肥満患者の安全性。このレビューでは、LMAの非日常的な使用と潜在的な安全性の問題について説明する。

表 1:ラリンジアルマスクエアウェイ(LMA)の進化1, 6, *

表 1:ラリンジアルマスクエアウェイ(LMA)の進化<sup>1, 6,</sup> *<br /><br /> *他にもさまざまな企業が製造する声門上機器が存在する。この表には、本レビューで説明した第1世代および第2世代のデバイスを提示した。<br />†OSP:中咽頭密封圧。OSPが低いと、胃への送気と誤嚥のリスクが高まる。<sup>1</sup><br />Teleflex Incorporatedの許可を得て再現および修正した。 ©2020TeleflexIncorporated。All Rights Reserved.

*他にもさまざまな企業が製造する声門上機器が存在する。この表には、本レビューで説明した第1世代および第2世代のデバイスを提示した。

†OSP:中咽頭密封圧OSPが低いと、胃への送気と誤嚥のリスクが高まる。1

Teleflex Incorporatedの許可を得て再現および修正した。 ©2020TeleflexIncorporated。All Rights Reserved.

表2.ラリンジアルマスク気道確保(Laryngeal Mask Airway, LMA)の非標準的な使用法の要約

表 2.ラリンジアルマスク気道確保(Laryngeal Mask Airway, LMA)の非標準的な使用法の要約

LMAの配置とサイズの選択

LMAは、筋弛緩薬の有無にかかわらず全身麻酔の導入後に簡単に設置できる。10Hemmerlingらによる研究では、初回挿入成功率は、筋弛緩薬を使用した場合は92%であったが、筋弛緩薬を使用しなかった場合は89%であった。10 選択したLMAサイズが小さすぎると、適切なシールができず漏れが発生し、換気が不十分になる可能性がある。11 デバイスが大きすぎると、適応性が低下し、シール不良や漏れが発生する可能性がある。これはまた、それが強制的に配置された場合、軟部組織、舌神経損傷、または咽頭損傷さえも引き起こす可能性がある。サイズ4および5のLMAは、ほとんどの平均的な女性および男性の成人にそれぞれ適切である。Asaiらの研究では、男女ともに大きなサイズのLMAを配置することで、漏れが減少した。11 最小膨張量を用いて適切に密封すると、咽頭測定内圧が低くなる。11 Brimacombeらによる300人の咽喉頭違和感を主訴する患者を調査し、カフの量が少ないLMAとカフの量が多いLMAを比較し、後者のグループで喉の痛みと嚥下障害の発生率が高いことを発見した。3 Higginsらによる5,264人の患者の前向き研究において、ETTとLMAの喉の痛みの発生率はそれぞれ患者の45.4%と17.5%であることがわかった。4 喉の痛みの発生率は、LMAと比較してETTの方が高い可能性があるが、不適切なLMAサイズと高いカフ圧も重大な咽頭喉頭合併症の一因となる可能性がある。4-6,11 コクランレビューでは、Mathewらは、深麻酔下または患者覚醒後のどちらでLMAを抜去する方がよいかどうかを評価するために、2,242人の患者を対象とした15件のランダム化比較試験を統合した。レビューでは、一方の方法が他方より優れているかどうかを判断するのに十分に質の高いエビデンスがなかったと結論付けた。12

LMAによる誤嚥リスク

LMAの使用に関してよくある懸念は、特にPPVが適用されている場合の誤嚥リスクである。LMAの最も一般的な禁忌は、妊娠中、外傷、既存の胃不全麻痺、腸閉塞、または絶食していない患者の緊急手術など、誤嚥リスクがある患者である。表3は、LMAに対する絶対的および相対的な禁忌の概要を示す。適切に絶食した患者では、いくつかの研究により、LMAによる誤嚥のリスクが非常に低いことが確認されている。8,9 Brimacombeらによると、同様の患者コホートにおいて、LMAによる肺への吸引の発生率は10,000人あたり2人であるのに対し、ETTおよびフェイスマスクでは10,000人あたり1.7人であると報告されている。9 BernardiniとNataliniが65,712の外科手術(2,517の腹腔鏡手術と主要な腹部手術を含む)を対象とした研究では、PPVの使用下でETTと比較して古典的LMAの吸引率に有意差はなかった。8 Parkらによるメタアナリシスでは、腹腔鏡手術を受けた1,433人の患者を対象に第2世代LMAをETTと比較したところ、口腔咽頭漏出圧、胃への送気、誤嚥に差は見られなかった。6 口腔咽頭漏出圧に差がないことは、ある程度の気道保護と、ガス注入された腹部に対しても十分な人工呼吸ができることを示唆している。6 LMAは腹腔鏡下手術で試用できるが、注意が必要である。中咽頭シール圧と胃吸引ポートが高い第2世代デバイスは、腹腔鏡手術に適している可能性がある。6

表 3.LMAの絶対的および相対的禁忌8,9,13,14

表 3.LMAの絶対的および相対的禁忌<sup>8,9,13,14</sup><br /><br />BMI =体格指数; LMA =ラリンジアルマスクエアウェイ; PIP =最高気道内圧

BMI =体格指数; LMA =ラリンジアルマスクエアウェイ; PIP =最高気道内圧

一部の第2世代LMAには、誤嚥を防ぐために胃管を配置する胃チャネルを内蔵している(表1)。大規模な観察研究では、700人の適切に絶食した患者がLMA Supreme™15 を使用して全身麻酔下に帝王切開を受けた。胃ポートを通して胃管を留置したLMA Supreme™の使用による誤嚥の報告例は​​なかった。15

15 cm H2Oを超える吸気圧は、下部食道括約筋の機能不全を引き起こし、胃への送気で誤嚥の可能性が高まることが指摘されている。16Devitらが、吸気量から呼気量を減算して吸気量で除算して得られる漏出率および胃への送気を評価し、さまざまな吸気圧で古典的LMAと標準的な気管挿管を比較した。漏出率は、LMAを介して供給される陽圧の増加とともに増加し、ETTでは低いままで変化しなかった。15 cm H2Oの吸気圧では、LMA使用による胃への送気は2.1%であったが、30 cm H2Oでは35.4%であった。17 Qamarul Hodaらは、胃吸引ポートと密封改善目的の後方カフを内蔵した第2世代のProSeal LMA™と、PPVを用いた古典的LMAを比較したコクランレビューで、逆流率には有意差が認められないと結論付けた。18 吸気圧が15 cm H2O以下に制限されている場合、新旧世代いずれのLMAも誤嚥の臨床的徴候なく適切に使用されている。17,18

自発換気対人工呼吸

LMAを使用する利点は、ETTよりも患者への刺激が少ないことである。したがって、多くの場合、必要な麻酔は少なくなる。19 使用の快適性の向上と新世代デバイスの開発により、LMAは機械換気とともに日常的に安全に使用されている。18,20-24 Radkeらは、LMAで全身麻酔を受けている患者の電気インピーダンストモグラフィーを使用して換気の再分布を評価した。22患者が自発呼吸している状態では換気の再分布はなく、圧規定換気(pressure-controlled ventilation, PCV)と圧支持換気(PSV)の両方で腹側に再分布を認めた。22 換気の腹側分布の結果には、死腔の増加と無気肺が含まれる。21,24 LMAで従量式調節(volume control ventilation, VCV)を使用すると、 PCVと比較して、コンプライアンスが低下し、最大吸気圧が高くなる。PCVは、設定された1回換気量を維持するために吸気圧を制限する。22 PCV、VCV、およびPSVモードと比較して、自発呼吸(spontaneous breathing, SB)患者では、呼気終末二酸化炭素が高く、一回換気量が少なく、酸素飽和度が低かった。21,23 BrimacombeとKellerは、持続気道陽圧(continuous positive airway pressure, CPAP)と比較しPSVを使用することにより、LMAによる酸素化と換気が改善することを発見した21

Kellerらによる自然呼吸とPPVの比較研究では、胃への送気、気道または心血管系の合併症、または患者の換気の問題に違いはなかった。24,25コクランレビューでは、PPV下で古典的LMAとProSeal™LMAとを比較した。18 ProSeal™ LMAの方がシールに優れており、PPVにより適している可能性がある。しかし、全体的にエビデンスの質は低かった。18ランダム化比較試験において、Capdevilaらは、さまざまな換気モード(VCV、PSV、およびSB)における覚醒時間と術中換気を検証した。23PSVまたはSBと比較してVCVを受けている患者では、古典的LMA除去までの時間が長かった。23

肥満とLMA

もう1つの論争領域は、肥満患者におけるLMAの使用である。横隔膜の動きを制限し、呼吸コンプライアンスを低下させる腹部内容物による呼吸パターン制限などの肥満患者に見られる生理学的変化は、彼らを治療困難な集団とする。20 腹腔鏡手術中のガス注入は、肺コンプライアンスをさらに悪化させ、換気を困難にする可能性がある。20 Cheongらは、体格指数(BMI)が30を超える患者では、換気障害のリスクが2.5倍増加することを発見した。26 Zorembaらは、軽度の末梢手術を受けている肥満患者(BMI 30 to 35)の術後肺機能と飽和度をProSeal LMA™とETTとで評価し、27 LMAグループでは術後肺合併症が少ない一方で、両方のグループで換気は適切であることを発見した。27 Kellerらは、ProSeal™LMAは挿管前にBMIが35を超える肥満患者の換気に一時的に有効であることを示した。28 第2世代LMAは肥満患者に使用されてきたが、肥満患者におけるLMA使用の安全性についてさらなる研究を行う必要がある。

まとめ

LMAの設計は進化し、臨床使用はここ数十年で大幅に拡大した。LMAは、適切な絶食患者において、最小限の吸気圧を使用した機械換気を安全に行えることを示す根拠がある。第2世代LMAは、第1世代のLMAと比較して、漏出が最小限で、胃への送気も限局的である。筋弛緩薬を検討することで、LMAの挿入と人工呼吸を容易にすることが示されている。肥満患者でのLMAの使用については議論の余地がある。研究により、BMIが30未満の肥満患者では換気が成功することが証明されている。ただし、BMIが高い患者では、肥満による生理学的変化により換気に支障が出る可能性がある。LMAは、患者のサイズに関係なく、換気や挿管が困難な場合の救助装置として常に検討する必要がある。適切なLMAの適応症例は引き続き議論されている。LMAに対する潜在的な合併症と相対的な禁忌を認識し、気道管理におけるLMAの使用を最適化する臨床アルゴリズムを調整することが重要である。

 

Shauna Schwartz、DOは、フロリダ州ゲインズビルにあるフロリダ大学医学部の麻酔科心臓胸部麻酔フェローである。

Yong G. Peng、MD、PhDは、麻酔科の教授であり、麻酔科の心臓胸部麻酔部門責任者であり、フロリダ大学ゲインズビル校外科准教授である。


著者らに開示すべき利益相反はない。


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