RAPID Response 記事:Monitoring Gaps
ニュースレターのこの号のDr. Sheron McLeanの言説は、モニタリングディスプレイと警告のデザインの難しさを表している。具体的には、Dr. McLeanは、非侵襲性血圧(NIBP)モニターを使用した場合に血圧モニタリングのギャップが生じる可能性を指摘している。米国麻酔学会の基本麻酔モニタリング基準は「麻酔を受けている患者は全員、少なくとも5分ごとに動脈血圧と心拍数を測定し、評価される必要がある。*」1 アスタリスクは、差異がチャートに記載されている限り、麻酔専門家の裁量に基づいてその間隔を変更することができる、というオプションを示している。現在のNIBPモニタリングデバイスは事前に定義された間隔で周期的に設定することができるが、Dr. McLeanが述べているように、測定が意図的に一時停止されたり、デバイスが測定できない場合がある。このような現実世界の状況に対応できるデバイスを設計することは、エンジニアにとっては難しいことである。GE Healthcare社のCory Stahl氏は、さまざまなケア状況のニーズを満たしながら、これらの課題に対処するように設計された自社のデバイスの設定オプションについて説明している。
設計上の課題の1つは、刻々と古い情報になっていく血圧測定値を表示し続ける期間である。臨床家が測定完了後すぐには値をみないこともありえるので、測定値はしばらくの間表示されなければならない。選択した測定間隔の終わりに測定値の表示を消す必要があるだろうか?一度だけの手動測定の場合はどうであろうか?そしてそれがどのくらい表示されるべきだろうか?測定した血圧はどれほどの時間有用であろうか、すなわちどれほどの時間患者の生理学的状況を反映しているのだろうか?5分以上血圧モニタリングの間隔が開くことを避けるために、ユーザは聞き取れる警告に応答するか、または測定が5分間行われなかったという表示を認識しなければならない。実際に私たちにとって、患者ケアに夢中になり、モニターを見上げて初めて最後の血圧測定から5分以上経過したことを認識するという経験は珍しくない。
別の問題として、モニタリングサイクルから逸脱した際ユーザーに警告するタイミングと方法が挙げられる。デバイスが測定に失敗するたびに警告音が鳴ることを想像していただきたい。これは一部の状況では役に立つかもしれないが、カフを意図的に外したり巻き直したりした際や測定が繰り返された際に、間違いなく不快なアラームの数が増加する。ではそのアラームはどのような形で行われるべきであろうか?耳に優しいリマインダーか、それとも大きなアラーム音か?モニターディスプレイは何を表示すべきで、さらにそれを通知すべきだろうか?ディスプレイ上の情報は臨床家が問題を解決するのに役立つだろうか?明らかに、血圧測定の頻度を改善することなくやっかいなアラームやアラーム疲労の問題を増やす可能性があるといえる。
麻酔モニタリング基準に準拠するのに役立つDr. McLeanが説明した1つの解決策として、臨床適用と広く使われるモニタリング基準の両方を理解しユーザーにモニタリングサイクルからの逸脱を知らせることができる独立したシステムがある。このアプローチは、臨床環境で必要となる装置が患者モニターに加えて必要となるため複雑にはなるが、電子医療記録を使用している場合、実行可能な解決策であるだろう。これらのタイプのアラームは、ベッドサイドの様々なシステムに実装されているが、どのようにして臨床家に潜在的なモニタリングサイクルからの逸脱を警告するかという問題が残る。視覚的な表示で十分であろうか?通知はどのくらい大きく表示すべきだろうか、そしてそれが患者記録を見にくくする可能性はないだろうか?音での通知は必要であろうか?もし必要なら、どの程度耳障りな音にすべきだろうか?この解決策においては、電子医療記録と連動する監視装置との間の調整方法がまだ存在しない。
医療機器「プラグアンドプレイ」(MD PnP)相互運用プログラムのDr. Julian Goldmanらは長年にわたり洗練された解決策を提唱してきた。2 そのプログラムのもととなる概念は、装置が互いに通信する統合臨床環境(Integrated Clinical Environment; ICE)を持つことである。麻酔記録の開始とともに、患者に接続されているすべての医療機器がケアの状況を認識し始めることを想像していただきたい。それによりエンジニアがさまざまなデバイスの機能を調整したり、誤アラームを最小限に抑えつつ、モニタリング基準やケアプロトコルに適合した有用な警告や通知を設計したりすることが容易になるだろう。さらに、臨床家が複数の装置を扱い異なる製造業者からの異なる表示オプションを理解する必要がなくなるだろう。
血圧測定は安全な麻酔管理の基本である。昔麻酔管理中に手動の血圧測定を使用していたころを思い出すと、手術室で患者ケアをする時に頻繁な血圧測定ができる自動血圧測定装置の出現には感謝の念に堪えない。現代の麻酔医療は患者のケアに役立つ優れたデバイスの恩恵を受けている。しかしながら、この議論が浮き彫りにしたように、患者と医療提供者を中心としたよりよいデザインにする機会がある。
Dr. Feldmanは、APSF技術委員会の委員長であり、ペンシルベニア州フィラデルフィアのPerelman School of Medicineフィラデルフィア小児科病院の臨床麻酔科教授である。
Dr. FeldmanはMicropore、DrägerMedical、GE Medical、およびMedtronicからコンサルティング報酬を受け取っている。
参考文献
- American Society of Anesthesiologists. Standards for basic monitoring (1986). Available at https://www.asahq.org/~/media/Sites/ASAHQ/Files/Public/Resources/standards-guidelines/standards-for-basic-anesthetic-monitoring.pdf. Accessed March 2, 2019.
- Goldman JM. Solving the interoperability challenge: safe and reliable information exchange requires more from product designers. IEEE Pulse. 2014;5:37–39.
ここに提供される情報は、安全関連の教育目的のみに使用され、医学的または法的助言を構成するものではない。個人または団体の回答はコメントのみであり、教育や討論の目的で提供されたもので、APSFの助言や意見ではない。特定の医学的または法的助言を提供する、または掲載された照会に応じて特定の見解や勧告を推奨することは、APSFの意図ではない。いかなる場合でも、APSFは、そのような情報の信頼によって引き起こされた、またはそれに関連して生じた損害または損失について、直接的または間接的に責任を負わない。